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科学者らが作物からより多くの油を生産することに成功ー人々の栄養強化と土地の保護に繋がる大きな一歩に

植物が種子に多くの油を蓄える秘密はWRINKLED1と呼ばれるタンパク質であることが判明しました。

文:Emma Bryce
2022年12月16日

科学者らは、大豆やピーナッツなどの作物が、より多くの油を生産するようにする遺伝暗号を解読しました。これにより、人間の食生活が豊かになり、土地の負担を軽減できる可能性があります。

現代人の食生活には、菜種、アブラヤシ、大豆、ピーナッツなどの油を含む種を作る植物が多く利用されており、タンパク質、食用油、食品添加物などの重要な供給源となっています。また、家畜の飼料としても間接的に重要であり、消費財やバイオ燃料の生産に油脂製品を使用する他の多くの産業においても重要なものとなっています。

私たちの生活はこれらの作物と切っても切れない関係にありますが、その結果、作物の環境負荷は増加しています。大豆のように熱帯地方で最もよく育つ作物は、森林破壊の危険性が高いため、環境負荷の増加が懸念されています。

しかし、Science Advances誌に掲載された研究者らの発見により、世界的に重要な作物の生産量を増やすことができ、その結果、必要な土地が少なくなることから、環境にとって大きな利益となる可能性が出てきました。

研究チームは、その鍵がWRINKLED1(WRI1)と呼ばれるタンパク質にあることを突き止めました。このタンパク質は植物の種子が生産する油の量を制御するのに役立つことがわかっています。さらに、このタンパク質が植物のDNAに結合することで、「油分の蓄積を制御する一連の指令を出す」こともわかっていると研究チームは説明しています。

また、これまでの研究から、種子に含まれる油分の量はWRI1がDNAに結合する強さと関係があるのではないかと推測されていました。そこで研究チームは、DNAとより強く結合できるタンパク質を作ることができないか検討を始めました。

研究チームは技術的に大きな一歩を踏み出し、WRI1の分子構造の全体像を描き出し、DNAと結合する部分を観察することに成功しました。そして、これらの部分がより強く結合するように改良を加えました。

このようにして、複数のバージョンのWRI1を作製し、それを植物に導入して油を生産する性質を調べました。

実験の結果、まず、改変したタンパク質では、DNAとの結合が10倍強くなっていることがわかりました。しかし、より顕著だったのは、改良型タンパク質を含む実際の試験植物では、バイオエンジニアリングによって作成された種子が非改良型の植物と比較して約15〜18%も油分を多く含んでいたことでした。この形質には遺伝性があり、植物の子孫は同じように油を生産する形質を持っていました。

今回の発見の興味深い点は、WRI1の結合部分が、油を生産する多くの種子植物で「高度に保存されている」ことです。これはつまり、異なる種で同じ特徴が見られるということを示しています。

このことは、研究者らがこの形質を他の作物にも応用できる可能性があり、多くの植物(大豆やアブラヤシのように生産量が多く商業的価値の高い植物も含む)の油の収量を向上させることができることを意味しています。

そのインパクトは非常に大きなものになるかもしれません。持続可能性を念頭に置いて活用すれば、収穫量の多い作物は、より少ない土地でより多くの食料を生産する方法にもなります。また、このような生物多様性と炭素隔離のために最も重要な場所において、農場を管理し、土地の破壊を遅らせることができます。また、栄養価が高く生産性の高い植物は、植物油の直接的な食品用途として使えるため、食料安全保障の向上にも繋がります。「世界的に増加する植物油の需要を満たすために不可欠な目標である」と研究者は書いています。

しかし、この実験室での研究が実用化されるまでには、まだ多くの課題が残されています。研究者らは、この技術を商業化し、植物に利用するために特許を申請し、このプロセスを加速させようとしています。

農地が減少し、野生動物の生息地を保護することが重要になる中、より少ない資源でより多くのことを行うことは、農業においてますます重要になると思われます。このような技術が、私たちをその道へと導いてくれることを願います。

出典:Gao et. al. “Molecular basis of the key regulator WRINKLED1 in plant oil biosynthesis.” Science Advances. 2022.