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糖に分解できる廃棄物系バイオマスを原料とする強靭なプラスチック

安価な材料で作ることができ、従来の食品包装用プラスチックと同じように高温に耐え、また食品に有害なガスを遮断することができます。

2022721

 

プラスチック汚染に対処するためには、プラスチックの使用量を減らし、リサイクルを促進する必要があります。しかし、プラスチックは現代の生活には欠かせないものとなっています。そこで、研究者はプラスチックの欠点に対処するもうひとつの方法として、強度を持ちながらも自然界で分解可能なプラスチックを作ることに取り組んでいます。

最新の取り組みはスイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)のチームによるもので、彼らは非食用植物から環境中で無害な糖に分解されるプラスチックを作りました。このプラスチックは従来のプラスチックに非常に近い特性を持っているため、食品や飲料の包装に適しています。強度があり、高温に耐え、食品を傷める酸素などのガスを遮断することができます。

現在市販されているバイオプラスチックは、トウモロコシのデンプンやサトウキビから得られる糖類を原料としているのが一般的です。しかし、その特性は化石燃料由来のプラスチックと真っ向から競合できるものではありません。高価であることに加え、高温に耐えられない、さまざまな形状に引き伸ばすことができない、ガスを遮断することができない、など様々な課題があります。また、自然界では従来のプラスチックと同じように分解が困難な場合も多くあります。

2016年、EPFLの研究者らは、植物の木質で食べられない部分からプラスチックやバイオ燃料に価値のある分子を作る方法を発見しました。彼らの研究は植物の細胞壁に含まれ、植物に剛性を与える長鎖状の分子であるリグニンに着目しています。リグニンは地球上で2番目に多く存在する天然物質ですが、農業や製紙業から排出される廃棄物でもあります。EPFLの研究チームは、一般的な化学物質であるホルムアルデヒドを加えることで、リグニンを有用な分子に変えることができることを発見しました。

Nature Chemistry誌に掲載された新しい研究では、上記の研究をさらに発展させています。新しい研究では、ホルムアルデヒドの代わりにグリオキシル酸を用いて、リグニンをプラスチックの主要な構成要素に変換しています。その結果、農業廃棄物の重量の最大25パーセントをプラスチックに変換することができたと報告しています。

このプロセスはシンプルで拡張性があり、安価な無機酸を触媒として使用するものであると研究者は報告しています。また、グリオキシル酸は工業的に入手可能な安価な化学物質です。

実験室でのテストでは、従来のプラスチックと同様に100℃の高温に耐えることができました。また、強度や剛性も同様の結果を示しました。さらに、包装用フィルムや、紡いで布にする繊維、3Dプリンター用のフィラメントに応用することができました。

この素材は化石由来のプラスチックと同じように化学的にリサイクルすることができます。また、環境中に廃棄されたとしても、最終的には常温の水中で構成要素である糖に分解されます。このプラスチックは、安価で持続可能なプラスチックとして有望視されていますが、「このポリマーの環境動態を完全に理解するには、毒物学的および生分解性に関する詳細な試験が必要である」と研究グループは書いています。

出典: Manker, L.P., Dick, G.R., Demongeot, A. et al. Sustainable polyesters via direct functionalization of lignocellulosic sugars. Nat. Chem. 2022.