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糖蜜のような素材で風力発電や太陽光発電に必要な大規模な蓄電池を安価に作ることができる

マンガンを主成分とするシロップ状の液体は、一度に数ヶ月間エネルギーを貯蔵することができ、フロー電池のコストを劇的に削減することができます。

文:Prachi Patel
2021年12月9日
(Click here for the English version)

外が暗くなっても送電網に電力を流し続けるには、大量の太陽光や風力エネルギーを蓄電することが重要になります。フロー電池と呼ばれる電池技術は、大規模なエネルギー貯蔵に有望ではありますが、安価で豊富な材料が必要です。

糖蜜のような質感の新しい電極材料は、その要求に応えることができるかもしれません。その黒くてシロップのような材料を「Joule」誌に発表したMITの技術者らは、この材料を使って作った電池は、最先端のバナジウムベースのフロー電池と同じように機能し、コストもはるかに安価であると述べています。

フロー電池は、化学エネルギーを大きなタンクに溜めた液体に蓄えるものです。電解液はポンプで膜を通過し、イオン交換によって電池を放電させ、電気を供給したり、充電したりします。電解液は一度に数ヶ月間エネルギーを蓄えることができ、タンクの大きさを大きくすれば、より大量のエネルギーを蓄えることができます。

フロー電池はリチウムイオン電池よりも安価ですが、現在最もよく使われている化学物質は高価で通常、鉱山の副産物として生産されるバナジウムです。そこで機械工学者のYang Shao-Horn氏らは、より安価で、より豊富な代替物質を見つけたいと考えました。

研究者らはいくつかの導電性材料を試してみました。最終的に選んだのは二酸化マンガンで、カーボンブラックとともに半固形のペースト状にして混ぜ合わせました。そして、この酸化マンガン系電解質を使って、実験室でフロー電池を試作しました。

この電池では、ペーストを膜に送り込み、導電性の亜鉛水溶液や亜鉛板と反応させることで電気を発生させます。このスラリー状の電解液の送液は、液状の電解液の送液に比べ8〜50%ほど多くの電力を必要とします。しかし、それでも1日以上電気を供給する場合、バナジウムフロー電池やリチウムイオン電池よりも低コストであることが研究者らの計算でわかりました。

研究チームは現在、電池の規模を拡大し、半固体電解質およびシステム全体の設計を改良して、電解質の送液に必要な電力を削減したいと考えています。

出典:Thaneer Malai Narayanan et al. Low-cost manganese dioxide semi-solid electrode for flow batteries. Joule, 2021.